□第1回講座
売れない時代の集客力
強化策
□第2回講座
品揃えはお客様に聞け
□第3回講座
なぜ売れないのか
□第4回講座
回転率こそ中古車
経営の命
□第5回講座
単品管理こそ長在車
対策の秘訣
□第6回講座
女性客をつかまえろ(1)
□第7回講座
女性客をつかまえろ(2)
□第8回講座
農耕型中販店へ
発想転換しよう
□第9回講座
買取りで仕入れ力を
高める(1)
□第10回講座
買取りで仕入れ力を
高める(2)
□第11回講座
求められる「売り込む」
から「買ってください」へ
の発想転換
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イトーヨーカ堂で羽毛布団を店頭に並べてセールを行った。普及品と高級品の両極のニーズに対応するため3万円と7万円の2種類を品揃えしたのだが、これがまったく売れない。思いあまって3万円と7万円の中間のプライス、5万円の羽毛布団を追加してみた。七五三のゴロ合わせが良かったせいではないだろうが、5万円の品物を入れたとたん、7万円と3万円の羽毛布団が急激に売れ始めた。
これはいったい何を意味しているのだろうか。
(事例は、鈴木敏文著「商売の原点」より) |
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品揃えとはなんなのか |
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消費者はその商品が高いのか安いのか、その基準が明確でないものは購入しない。結果論であるが、5万円の品物を入れることによって、3万円と7万円の価値の判断基準をお客様に提示させたことにある。3万円と7万円の商品だけでは価格が離れていて比較のしようがない。ところが5万円の商品を入れると、これが両サイドの商品を比較するモノサシになる。
5万円に比べて「3万円はお徳」であり、7万円は5万円に比べて「ちょっと贅沢だが、どうせ買うなら」というわけだ。これこそ品揃えの妙味というものだろう。ライバル店の商品と比較させるのではなく、あくまで自店の品揃えのなかから選ばせる。お得感を演出する。その意図的な商品構成こそ本来の品揃えなのだ。 |
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自社のなかで比較させる |
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こう考えると私たち中販店は、中古車の品揃えについてもっと合理的に考えてみる必要がある。品揃え次第では展示台数30台程度の小規模店だって大規模店に負けない集客力を確保することだって可能だろう。
自社が得意とする車を中心に据え、来店されたお客さまにその周辺の価格帯およびグレード別に構成して展示車を相互比較させられる品揃えのやり方が考えられるだろう。そうすれば30台であってもお客様に割安感を訴えることも可能だろう。つまりその30台を、メイン車を核としたひとつのヤマ(グループ)ととらえて品揃えをする。
極端に言えば、ヤマの核となるクルマは別に利益を出さないでも良い。チラシや物件掲載した場合、価格的にユーザーの関心を引くことが役割だからだ。さらにいえば“客寄せパンダ”になることと、利益を出す車は別である。イトーヨーカ堂でいえば、5万円の羽毛布団の役割を担うのが核となるメイン車だからだ。 |
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勝つための仮定と検証のやり方 |
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イトーヨーカー堂の実例から学ぶもうひとつは、仮説と検証の考え方である。
前述の羽毛布団の例でいえば「5万円の商品をラインアップさせれば相乗効果が生まれるだろう」というのは机上の考えである。「もし」「たら」の仮定の世界だ。それを実際に販売の現場でやってみる。そして、成功すれば5万円の商品投入は正しかったという検証になる。羽毛布団は七五三の品揃えでいけるということが立証できたわけだ。失敗したら、違う仮定を考えればよい。
中販店では、この仮定と検証がない。過去の成功体験や他社が儲かった話で仕入れをする。市場がどんどん動いているのに、過去のある時点に停止した考えで仕入れをするのだから、ミスマッチになるはずだ。ひどい話し「社長が仕入れてきた車は絶対に売れない」という神話が社内にできたりする。 |
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購入しなかったお客の声こそ重要 |
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商品が売れないのは売れない理由がある。値付けが間違っているのか、品揃えが適切でないのか。こうした問題を放置して「今度は違うクルマを仕入れよう」という勘と経験では、同じ過ちを繰り返すことになる。
大切なことは、そこで仮説をたてて検証してみることだ。たとえば、ある車についてどんなプライスゾーンにどれほどの潜在ユーザーがいるか、これを知ることは他社との競争の上で優位に立てる。そこで仮説を立ててみる。一つの方法として中古車情報誌に掲載するごとに、同一車種(同一の年式・走行距離・車色=できたら新古車)の価格を、そのつど数千円の単位で上下させる。これによってそのクルマの値ごろ感が検証できる。うまくいくと最短2週間でそのクルマのスイートスポットをあてることができる。
品揃えにしても検証の仕方がいろいろある。成約したお客様に対して「購入の動機」調査はどのお店でもやっていることだが、本講座の第1回目でも述べたように、成約率は来店客の3割程度が一般的だ。逆にいえば7割の来店客を逃がしているということだ。受注した3割のお客様の調査をしてもムダとは言わないまでも、どうせ調査をやるなら買わずに帰った7割の来店客に対してやるべきだ。聞くべきことは「求める車がなかったのか、あっても高かったのか」。
これを1週間単位さらに1カ月単位で集計、求車ベスト5をリストアップする。これによって品揃えに反映させるデータとなる。勘と経験で仕入れするより、お客様に教えてもらったほうがよほど的確だ。もちろん、この調査データを鵜呑みするわけではないが、まず品揃えして検証してみることだ。
いずれにしても、仮定と検証の積みかさねがユーザーのニーズに一歩一歩近づけることになり、その結果として集客力の強化につながってくる。 |
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